【書評】悪童日記

悪童日記 (ハヤカワepi文庫)

米原万里という知る人ぞ知る作家さんが「打ちのめされるようなすごい本」という著書の中で紹介していたので、読んでみた。

これは主人公の双子の成長の物語。まず双子のお母さんがお母さんの実の母(双子から見たらおばあちゃん)の元に双子を預けるところから始まる。戦争中の時代設定のため、双子を疎開させるためである。

 

一般的には過酷だろう状況や戦争時の危険などに双子は相対するが、この双子の独自の考え方ですべてを飄々と乗り越えて成長していく。例えば、おばあちゃんやそれ以外の人から理不尽な暴力を振るわれるとか。その時の双子の対応がすごくて、痛みに強くなるために双子がお互いをお互いが殴り合うということを始める。徐々に強度を増し、最終的には痛みを感じなくなる領域までにする。筆者の書き方がうまいのもあるが、こんなダークな話を飄々と記載している。世の中の状況と双子の態度のアンバランスさがすごいシュール。だけどそれがこの本の魅力になっている気がする。


というかこの双子たちの問題解決能力、勇気、知性が半端ない。現代にいたら、確実に何らかの分野で大成していそうな気がする。特に起業家だったら最強な気がする。


上記のほかにも双子たちは自分自身を成長させるための様々な「練習」をする。ののしり言葉の応酬による精神鍛錬、断食の練習、乞食としてふるまう練習、動物を殺して残酷になる練習、外国人将校と話すための言語の習得などなど。まあこの紹介を書くだけで、この本を読んだことがない人もなんだこの本?って感じだろうけど、実際に本を読むともっとこの本の不思議な魅力を味わえると思う。
それと最後のシーンもまさかそう来るかという意外性があって面白いと思う。ネタばれになるので、気になる人は本書を読んでくださいまし。

ちなみになんかこの本自体は続編が2つあるらしいのだけれど、これ以降は米原さんが読まなくてもいいようなことを書いていたので、その助言に従い、特に読んでいない。
時間があればいつか読んでみたいけれど、読む価値がある本に時間を使いたいからなー