【書評】FBI心理分析官

FBI心理分析官―異常殺人者たちの素顔に迫る衝撃の手記 (ハヤカワ文庫NF)

 

今回の本は映画『羊たちの沈黙』のモデルとなったFBI捜査官が記した実話に基づいた異常犯罪犯の記録。自分はこの映画が好きだから見たというよりも、「経営参謀」という本の中で主人公と主人公の転職先の社長が話す中で、この本の話題が出てきて興味を持ち、読むことにした。犯罪者を特定する場合、プロファイリングという手法によって、現場に残っている痕跡から犯人像を推定し、そこから犯人の特定を目指すという流れになるが、市場調査も同じの考え方で進めるという話だった。

まず感じたのは、この本は人間の闇に焦点を当てすぎていて、個人的には読むのが苦しかったということ。例えば、実際にあった事件のケースとして、以下のようなものが出てくる。
・ターゲットの血液と臓器をミキサーにかけて飲んでいた犯人
・妄想に捕われ、頭の中で父親から命令されて殺人を実施したと主張するもの
・殺害した上で性的な行為を実施する
などなど。。

他にももっとグロい例はいっぱいあるのだが、書きすぎると見る人も不愉快だろうし、ブログの運営サイドからもクレームが来るかもしれないので、やめておきたい。

一方で、このような残虐で倒錯した殺人事件一件一件に対して、よくもここまでというくらい細部を冷静に観察し記録し、また関わっていない案件でも犯罪者の収容所に足繁く通い、殺人犯を面接して回って異常犯罪者の深層心理を解明しようという著者の情熱には舌を巻く。ある意味真剣に情熱を持って従事しているからこそ、リアリティがこちらにも伝わってきて、胸くそ悪くなるのだろう。

また、プロファイリング自体の威力にも驚かされる。事件現場の状況や犯人の残した手がかりから、犯人の人種、年齢、性別、性格、家族の有無、犯人の心理状態、居住地域など様々な要素を推定していく。そしてこの手法がただの絵空事ではなく、ちゃんと機能して犯人特定、犯人逮捕のスピードを上げることに貢献しているという事実。この本自体、1994年というもう20年以上前に初版の本であるし、またこの当時には一般的ではなかったパソコンを使った解析の技術も今はずっと進んでいるだろうから、昔よりも今はもっと精度が高いものになっているのかもしれない。

 

個人的にはこんな一節も気になった。
「死刑は凶悪犯罪を抑止するものではない。それは単に被害者の遺族や一般社会の復讐心を満足させるだけだ」
感情的にならずにじゃあ今後はどうやってこのような事件を起こさない社会を築いていくか解決策を導いていく。著者のあくまで前向きに問題解決に向き合う姿勢が伝わってくる。